建築士事務所とは
業務としては、建築の設計や監理・調査・鑑定、法令に基づく手続きの代理等を行います。
設計だけを頼むこともできますし、施工者の選定から完成に至る間の一切の監理まで一括して依頼することもできます。
また、街づくりのコーディネーターとして都市計画をまとめたり、大きな建物では構想、事業収支計画、基本計画、実施計画、監理から完成後の施設管理計画、維持保全計画まで頼むことができます。
そのほか、文化財としての建物の保存や、長く使い続けていくための相談に乗ったりもします。
建築士事務所は法人と個人があり、それぞれに一級建築士事務所、二級建築士事務所、木造建築士事務所があります。
また、それぞれの建築士事務所には特徴があり、構造が得意な事務所、設備が得意な事務所、デザインが得意な事務所、住宅の設計が得意な事務所、店舗が得意な事務所、大きなビルが得意な事務所など様々です。
建築士とは?
構造、規模、用途に応じて設計等ができる範囲が決められています。
他人の求めに応じ、報酬をもらって設計をする場合には、必ず、都道府県の知事が認可する「建築士事務所」の登録が必要になります。
更に、登録を受けた「建築士事務所」には、「管理建築士」が所属しなければなりません。
また、建築士の資格を持った人たちの団体で建築士会というのもありますが、これは、建築士個人が集まって組織する社団法人であって、各都道府県に一ヶ所づつ設けられています。
建築士事務所は何をするか?
FAQ
工事の見積書で、ある項目のある材料が単価1,000円その数量が5個その工事手間賃が3,000円合計8,000円となっています。
そして同じような項目が少なくても800から200項目があります。
その単価がそれで良いのか?その数量が多すぎないか?この工事の手間がそれだけかかるのか?
...などについて全項目をチェックします。
設計事務所が作った(設計図書)に従って見積する場合、(その見積書)をその設計事務所がチェックするのが当然です。
見積が設計内容の通りになっているかどうかは設計した者が一番よく評価できるからです。設計事務所の設計監理があると工事金額はむしろ安くなることは、いまや一般の常識です。
設計事務所は設計するときに「その住宅が少しでも良くなる」ように考えます。
また、工事金額が見た目に(安くなっているかのように)当然含まれているべきものを別途にしたりすることをしません。
建て主が必要なものを全部含んで設計します。
「高い」のではなくグレードが高く」また「別途などがない」のです。
以上の多くの作業を設計事務所が担当した住宅は建て主の要望を満たし、建て主の予算に合わせたものであり、グレードが予算の範囲内でできる限りのものになっているはずです。
設計監理料はこれら建て主のための(施工者側=建て主と相反する利益関係=でない)技術・経験・知識ある有資格者の(技術料)なのです。
そして、その技術料を払ったときの工事金額は技術料を払わなかった時よりも安くなっていて、しかも、グレードが高く、使いやすく、快適な住宅になります。
「ぜいたくな住宅」や「予算のある建て主」だけが設計事務所をつかうのではありません。
むしろ「敷地が狭い」、「家族が多い」、「予算が足りない」、「敷地が斜めになっていたり崖があったり」などがかえって設計の腕を必要とします。
安い住宅は程度を落とせばやさしい物ですが、グレードを落とさないように気を使えば使うほど、難しいのです。
つまり、設計の腕が必要になるのです。
安い住宅、色々な問題がある住宅ほど設計事務所が技術料を払ってもなお必要だと思ってください。
業務報酬は建設省の告示により決められていて、人件費+経費+技術料で成り立っています。
その仕事に拘った日数に1日当たりの収入(日額)を掛けたものが人件費です。
経費は人件費の同額まで認められていますが、事務所の規模により巾があり、ここで価格の競争原理が働きます。
技術料は特殊な設計の場合やブランド料などの加算です。日数が不確定の時は、標準人・日数が目安になります。
一例として、3,000万円の住宅では、設計32人、監理16人です。
仮に日額を4万円と想定し、経費を0.7とすると48×4万円×(1+0.7)=326万円となります。
日額は、経験や年齢、地域性などにより変わります。
標準人・日数は建物の種類、工事費によりデータが作られていますので、くわしくは各都道府県建築士事務所協会にお聞きください。
特に、貴方に合った設計事務所を!
まず、建築士事務所(登録)の資格がない事務所は問題になりません。
建築士事務所といっても色々あります。
・構造が得意な事務所
・設備が得意な事務所
・見積や積算などをする設計事務所
・公共や行政関係の仕事が多い事務所
・確認手続きが専門の事務所
・大きいビルや体育館等が得意な事務所
・デザインが優れた事務所
・住宅が得意な事務所...色々あります。
そして、貴方(建て主)にあった設計事務所が必要です。
設計事務所が見つかったら、
設計監理を委託する前に、色々のお話をすることです。
お話を面倒くさいとか暇がないとか言うようであったら、その設計事務所は貴方の住宅には向かない事務所です。
次の設計事務所を探してまたお話をしてください。
他の設計者に替えても良いか?それができるか?
設計事務所には貴方
(建て主)のお金を任せることになります。
設計監理の腕があっても、建て主との間に信頼関係がなければ良い仕事はできません。
そのために、忌憚なくお話をすることです。
設計監理等の業務を委託する前にお話をしてください。
過去の作品等を見せてもらって下さい。
間取りのプランやスケッチやメモなどは、まだ先にして下さい。
よく話もしないうちに「貴方の間取りはこうしたらどうでしょうか」と言って間取りのスケッチを書いたりする事務所がありますが、それは信頼ができてからのことで間に合います。
作業を見てから信頼するものではないのです。
信頼したからする作業とお考え下さい。
信頼する前に作業をすると代金が出ることもあります。
信頼ができなかったら、別の設計事務所と会って、お話をして下さい。
それで良いのです。
一つの方法は、団体に加入している設計事務所に会い、お話をすることです。
団体の役員に、その団体に加入している設計事務所を紹介してもらいます。
その事務所とお話をして貴方と気が合わなかったら遠慮なくもう一度役員に電話などして、別の事務所を紹介してもらってください。
何度でも良いのです。
こういうことができない団体や事務所は、逆に信頼できないと思って良いのです。
良い設計事務所を見つけてください。
そして、最良の住宅を造ってください。
私達の団体は、協力を惜しみません。
設計以前の作業
(1)設計以前の作業
A.予算計画に参加、助言など
- ●建て主の予算に対する各工程の内容や利点・欠点の説明・相談など
例えば木造・鉄骨・コンクリートなどはそれぞれいくらの予算が必要か?
それぞれの特質は?この場合どれが最適か?などについて相談する。 - ●建て主の予算で何と何をするかの相談
建築工事はいくら・電気や給排水冷暖房などの設備はどれとどれがそれぞれいくら・什器や家具などを造り付けにする場合の利点は何?その予算はいくら、などについて詳細な例をあげて相談する。 - ●もちろん、住宅金融公庫や公的融資などの相談。
B.工事の計画に参加、助言など
- ●工事の期限など
- ●工事施工の方法
1)特命とはどういうものか?
2)入札とはどういうものか?
3)見積もり合わせはどうか?などを説明。この場合はどれが最適か?などについて相談する。
C.生活に適切な間取り、空間の構成、デザイン(=計画)を具体的に助言など
●間取り
一般に設計を依頼される場合、ご自身で考えたプラン(間取り図)を持ってこられて「これはどうですか」とおっしゃる場合がある。それらのプランは、その方がマンションに住んでいる方だとそのプランも<マンションの間取り>みたいだし、住宅メーカーの家に住んでいた方はやはり<住宅メーカー型のプラン>に似ている場合が多い。(自分が知っている家に似てしまうことが多い)
間取りは<部屋の並べ方>ではなくて<その空間に住む方や家族が快適で合理的で便利で良いデザインを感じて生活するのに最善の空間>を創作もしくは選別することである。
その作業を設計事務所は依頼された方と一緒に、そして依頼された方のために努力する。
大工はカンナをかけるのが上手いとすれば、また建築会社は家を作る工事が上手いとすれば、設計事務所は家を考え創作しデザインすることが上手い。そして、あれやこれやを具体的に解説し説明し相談する。
例えば、「この柱はなくてもいい」とか「この部屋は大きなテーブルを置くと椅子に座った人の後ろを通れない」とか「柱を特注する費用で絨毯とカーテンができるけどどっちにするか」とか計画を一緒にしてくれる。
D.日常また休日の、各家族一人一人の生活、性格、などを満たす最適な空間はこれで良いのか?
子供がおとなしいから活発になるように子供部屋も明るい場所で家族と触れ合いが多い場所に設置し、色や配置なども明るいデザインにするなどの気配りをする。
(例えば陰気な子供の壁をグレイやブルーにすることは設計ミス...)
主人は釣りが好きだから釣り竿を繋ぐ長い空間が欲しいなどを一緒に考え、実行できるように工夫する。
E.日常または休日の、家族全体の生活、に適切な間取りか?
えば休日は家族で食事をする。..娘のピアノのレッスンを中心に家族が団らんする...
その他家族の生活に適切な空間の組み合わせや全体の構成
(間取り)を建て主や建て主の家族と一緒に考える。
F.その他、あらゆる方面にわたっての相談など
「高そうだから...」とか「こんなこと言ったら...」などと考えて設計事務所と話をしないことがある。
が、設計事務所は「それは予算がこれだけかかる」とか「やっても後で無駄になる」とか「それはいいですね」とか対応してくれる。
あらゆる方面にわたっての相談をする。
どんなことでも話をして頂きたい。
設計図書作成
(2)話し合ったあと(設計図書=設計図と仕様書)ができる。
その
(設計図書)は見積を経て工事金額を決定するものであり、またその住宅の施工の詳細までを決定するものである。
だから、
(その設計図書)が建て主の希望や要望を確実に満たすものかどうかを見積や工事施工の前に建て主が確認しなければならない。
ところが、建て主は
(設計図書)を自分の眼では確認できないことが多い。
「ここはこうなっていますよ」と図面を見せながら説明をして確認しなければいけない。
設計図書が建て主の要望と違っていないように、再度それも、具体的に確認をする作業を設計事務所がする。
施工者との打合せ
(3)設計図書を「住宅を建てる方」に代わって施工者に提示し、説明し、質問などに答える。
設計事務所は建て主と話し合いをしてでき上がった設計図書を施工者に手渡し、詳細を説明する。
施工者はその設計図書を見て「質疑書」を設計事務所に提出する。
設計事務所はその質疑に「応答書」を出す。
施工者はこれらによって更に詳しい情報を得てから「設計図書」に基づく「見積書」を作成提出する。
相手の施工者は2~3社を競争させてもよい。
見積のチェック
(4)施工者(建売業者や住宅メーカーあるいは工務店など)が提出した「見積書」の内容が適切か(材料・数量・単価・手間賃・会社利益・その他各金額が妥当か)をチェックする。
見積書というものは
1.材料(製品なども同じ)が単位当たりいくらで=単価
2.それがどれだけ必要か=数量
3.合計いくらか=金額 と記述されている。
施工についても
1.1人いくらの職人が=単価
2.その工事を仕上げるのに何人かかるか=数量
3.合計いくらかかるか=金額 と記述されている。
これらがその住宅全体にわたって拾い出されている。
その全項目の金額が合計されたものに、施工の現場経費、会社経費を加えたものがその住宅の総金額である。
それに消費税....それ以上に!
普通、現場経費は12.5%内外、会社経費が12.5%内外である。
または、両方を一緒にして経費とすることもある。
この場合、経費の金額や%を気にすることは大事ではある。
しかし、もっともっと大事なことがある。
例えば「おたくだから経費を無しにしましょう。儲けなくてもいい...」と言って見積書に記載されていた経費を0
(ゼロ)にする売り手がいる。
少なくとも、経営をしている個人や会社である以上、「経費をゼロにすること」はあり得ない。
「経費をゼロにする」ということは「その分がどこか他の項目に紛れ込んでいる」ということである。
もし本当に経費がゼロでも仕事をするならば、それは(倒産前の自転車操業)の可能性があるからかえって注意をしなければいけない。
だから、「経費をゼロにする」ことよりも、他の項目の単価・数量・金額が設計図書に基づくものであり、妥当なもの、正当なものであることが大切である。
これらが妥当か?正当であるか?は専門的な知識と経験を必要とするものである。
一般の方々では分かりにくい。
設計事務所は
(売り手の見積書)をチェックする時にどうするか?は次の通りである。
まず、材料(製品)の単価が正当かどうか?次に数量を確認する。
全ての材料等の数量が設計図書の通りであるかをチェックする。
これら全項目を詳細にチェックする。
第3者、つまり売り手側ではなく、買い手側に立って...
だから『経費がゼロ』と言っても、それ以上のものが他の項目に紛れ込んでいたら、ちゃんとわかる。
設計事務所は一般にこのような見方をする。
したがって、「経費はゼロ」と言ったらかえって注意する。
見積もりの他の項目全体が正当(実費=安い)であるかどうかを見定める。
見積が正当であれば、経費も正当なだけ認める。
そのほうが、結局は安くてよい買い物をすることになる。
助言・進言
(5)適切な施工者を選定するためのデータなどを整理し、建て主に助言・進言する。
見積書を提出した施工者
(売り手)1社または数社のデータを整理して建て主
(買い手)に助言する。
見積書は具体的な金額を表すものであるが、同時にその見積書を作成した側の意図や技術的な傾向をも物語るものでもある。
例えば、木材や大工手間賃が高いか安いかで木材工事をいつも使っている社員に近い立場の大工が担当するのか、別のグループに外注するのか、わかる。
全体に安いのに、電気工事が高いのは何故だろう?とか、考えていくと、「社長の弟が材木会社をやっている...しかし、設備関係は大きな設備会社と提携しているようだ」とかがわかる。
現在は、会社・個人を問わず、何らかのやり方で技術を高めることによりコストを削減し、価格を下げないと生き残れない時代である。
そのことに対する会社の姿勢が、見積書の数字や項目や構成に表れる。
見積もりの過程でやり取りする質疑応答に付いても言える。
「こんな質問をする会社は、どうも...」となることもある。
また、設計事務所は年に、数件あるいは10数件の住宅の建設に関わっている。
それらの、着工から完成までの全ての過程に関与している。
当然(売り手)側のやることや、その背景も熟知している。
それやこれやを専門家として総合し、整理して助言する。
契約立会い~完成検査
(6)「住宅を建てる方=買い手」と「工事を施工する方=売り手」の契約に立会い、著名捺印する。
契約はその住宅のすべてを決定するものである。
その契約に立会い、著名捺印すると言うことは、契約以後のあらゆる問題について、「これは設計図にこうあったからこうなのだ!」とか「これはこうなければいけないことだからこうしなければいけない!」ということを、(買い手)の立場で判断していくことを、(買い手)に対して約束すると言うことである。
そして、(買い手)に代わって必要な指示をしていく立場であることを、(売り手)に対して宣言することでもある。
(7)確認申請などの手続き
行政関係の手続き、住宅金融公庫など(代行もしくは指導)
(8)工事施工に関して、各工事の必要な時期に監理をする。
施工が「契約=設計図書、見積書、等」に反する場合には修正させる。
また、技術的に不備である場合なども適正にさせる。
設計事務所は第三者の立場で、公正に、建て主の為に監理をする。専門的な立場で監理する。
(9)工事の各段階に関して適切な「検査」をする。
鉄筋が設計図書の通りか? 防水が適切であるか?
設置した機器が作動するか?などの全般全項目に必要な検査や試運転などをする。
検査に合格しないと施工は次に移れない。
(10)工事費支払いの審査をする。
途中も含めて、施工者の請求金額は全てチェックし、支払いの金額、時期等について承諾をする。
普通、工事途中の工事金額は工事の進め方によって建て主が施工者に支払うものである。その時点でその金額その時期が適切かどうかを設計事務所がチェックする
払い過ぎで工事中断などがあったとき、不測の損害をこうむらないようにするためである。
(11)完成検査をする。
できあがった建物が「契約=設計図書、見積書、等」どおりにできていることを確認する。
検査に<合格>してはじめて引き渡し、工事費の最終支払いができる。